西宮市医師会会報「談話室」

西宮市医師会会報『談話室』(令和6年1月 641号)に掲載された「われら辰どし」の拙文『認知療法ライブラリーの開設』を公開します。

 

森田療法の図書室を訪ねて

認知療法研究所「文書館」活動の一助となることを期待して,2022年10月6日,公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団を訪問し,同財団の図書室を閲覧させていただきました。森田療法関連の専門書から一般書,そして精神医学書,雑誌(例:『精神療法』『こころの科学』),さらには他の精神療法(精神分析や認知療法・認知行動療法など)の書籍まで,およそ750冊の図書が整然と書架に収まっていました。森田療法のDVD視聴も可能で,YouTubeには公式チャンネルが準備されています。大変に落ち着く空間で,「文書館」の良いモデルになると思いました。

 

認知療法ライブラリーを開設して

Aaron T. Beck, M.D.の1周忌に当たる2022年11月1日,認知療法研究所「文書館」活動の一環として,『認知療法ライブラリー』を開設しました。
認知療法ライブラリーは,認知療法・認知行動療法に関連した,わが国で出版された書籍について,その収集と保存・管理と貸出を念頭におくものです。関連する書籍は1980年代後半から公にされてきましたが,すでに30年以上を経て入手困難なものも存在すると推測します。できるだけ多くの書籍を遅まきながら収集することを,認知療法ライブラリーの第一歩と考えています。

 

認知療法ライブラリー開設後1年が経過して

認知療法研究所のブログに,Web版『認知療法の本箱』として著書・訳書等の目録を挙げています 。著書は107点,訳書は99点,その他,事典・雑誌・視聴覚教材などとなっています。
経費上の制約から,訳書は限定的に収集し,ひとまずはわが国の専門家の手に成る著書に限る,という方針をとってきました。そのため訳書数が少なくなっています。
試みに2023年9月末に国立国会図書館のホームページで検索したところ,「認知行動療法」の図書は818件ありました。中には『精神医学事典 新版』(1993年)や『専門医をめざす人の精神医学』(第3版2011年)なども含まれていましたので,それらを除外して,収集対象となりそうな著訳書を選択してみました。
出版された図書について,その年次推移を図に示してあります。1989年から1993年までの5年間に出版された著書は3点,訳書は15点でした。最近5年間(2019年〜2023年)では著書64点,訳書51点でした。
私事になりますが,最初期の著書3点の中に,拙著『認知療法への招待』(金芳堂,1992年)が含まれています。序章に挙げた以下の項目は,日本認知療法・認知行動療法学会(JACT)のホームページに「認知療法とは」と題して掲載されています。

1) 認知療法は,きわめて常識的な視点からなされる“コモンセンス”の精神療法である。
2) 認知療法は,認知のパターンに関する理論的仮説(認知モデル)を基礎としている。
3) 認知療法では,認知のパターンを修正することにより,治療効果を得ようとする。
4) 認知療法は“セルフヘルプ”の精神療法である。

本書は改訂4版(2006年)で留まったままで,まだまだ在庫があるのでしょうか,金芳堂からの連絡が途絶えて久しいありさまです。改訂をめざす思いは捨ててはいないのですが,気持ちを奮い立たせるだけでは何ともなりません。
JACTの事務局長を退任するに当たり『認知療法News』第71号 (2017年) に「しんがりであること」と題した一文を掲載していただいた後,数年を経過した今では周回遅れも甚だしく,気がつくと時流から遠く隔たってしまいました。マインドフルネスとかアクセプタンス&コミットメント・セラピーとか,音写の氾濫に圧倒されています。
認知療法ライブラリーから最初に図書を借り受けるのは,図書の収集と保存・管理に努めている当の本人かもしれません。

 

認知療法・認知行動療法関連の図書数の年次推移 1989-2023

認知療法・認知行動療法関連の図書数の年次推移 1989-2023